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口入屋 謀次郎 (短編小説)④ 外道非道

第一節 正しさは刃物になる


阿波の城下で
「外道」という言葉は、
あまり使われない。

使われない理由は簡単で、
皆、自分が外道でないと
信じているからだ。

代わりによく使われる言葉がある。

「仕方がない」
「皆のため」
「決まりだから」

それらは刃物である。
しかも、よく研がれている。

伊予屋の朝は、
以前と変わらなかった。

暖簾を掛け、白湯を飲み、
帳面を開く。

変わったのは、
人の来方だけだった。

来る者が、
妙に胸を張っている。

最初の客は、
町の油屋の番頭だった。

「旦那、
ちょいと口入れを頼みたい」

声音は柔らかい。
だが、柔らかさの中に、
他人の人生を動かした
経験の重み
があった。

「下働きが一人、
要らなくなりまして」

要らなくなる、という言葉ほど、
人を軽く扱う言い方はない。

「何か粗相でも」

謀次郎は形式通りに聞いた。

番頭は、首を横に振る。

「いや、真面目すぎるんです」

真面目すぎる。
また出た。

「帳面を勝手に見たがる。
油の量を細かく測る。
売り先の誤魔化しに口を出す。」

それは粗相ではない。
だが、商いの邪魔ではある。

「客からの信頼は」

「あります。
だからこそ、困るんです」

信頼がある者ほど、
切るときは理由が要る。

「外道な話ですがね」

番頭は、そこで笑った。

「うちには、
ほどほどでいてくれる人間
必要なんです」

ほどほど。その言葉は、
城下で最も多くの人間を
無職にしてきた。

伊予屋は、口入屋である。
切られた人間を、
次へ回すのが仕事だ。

だが、
切る理由まで
整えてやる必要はない。

「その者は、
次の奉公先でどうなります」

謀次郎が問う。

「真面目すぎる、で通します。
今は皆、それで納得しますから」

納得。それは、
考えないことを選んだ状態を指す。

昼過ぎ、
切られた本人が来た。

年は二十そこそこ。
目がまっすぐで、
頭を下げる角度が一定だった。

「お話は、聞いております」

そう言って、
自分から頭を下げた。

自分が切られた理由を、
すでに理解している者の下げ方だ。

「油屋では、皆のために、
見ないふりをすることが大事だと
教えられました」

その「皆」には、
自分が含まれていない。

「それが出来ませんでした」

出来ないことを、
誇りでも不満でもなく言える者は、
この町では扱いづらい。

幸吉が、場を和ませようと笑う。

「ま、どこも似たようなもんですよ。
正しい人ほど、居場所がなくなる」

慰めに見せかけた真実ほど、
残酷なものはない。

佐一は、
帳面をめくりながら言った。

「粗相なし。借金なし。素行良好。
……切る理由、ありませんね」

だから、
理由を作る。

それが、
外道の第一歩である。

その夜、
伊予屋に一通の文が届いた。

差出人は、油屋。

内容は簡潔だった。

――あの者、
――他所でも使わぬよう
――口添え願いたい

口添え。それは、
口入屋にとって
最も汚れやすい言葉だ。

謀次郎は、文を畳み、
囲炉裏の縁に置いた。

燃やさない。
残す。

証拠は、
いつも正しい側に都合が悪い。

海が、静かに言った。

「それは、
皆のためなんでしょうか」

謀次郎は答えなかった。

正しさを問うた瞬間、
すでに遅い場合がある。

城下で言う「外道」とは、
悪いことをする者ではない。

悪いことを、
必要だと説明できる者
のことだ。

そして、その説明は、
たいてい、とても分かりやすい。

謀次郎は暖簾の端を撫でた。

ほつれは、まだない。

だが、
刃物のように薄い正しさが、
その向こうで光っているのが、
はっきりと分かった。

第二節 切る理由は伝染する


外道は、
一人では成立しない。

必ず、
理解者共犯者
見て見ぬふりをする者
を連れて歩く。

城下町で最初に変わるのは、
人の言葉づかいだ。

「切る」
「外す」
「控える」
「回さない」

どれも刃物ではない。
だが、人を確実に削る。

油屋の件があってから、
伊予屋に来る客の口ぶりが、
目に見えて似てきた。

「悪い奴じゃないんだがな」
「腕はあるんだが」
「人としては、問題ない」

前置きが丁寧になるほど、
本題は冷たくなる。

次に来たのは、
染物屋の主人だった。

「下職を一人、外したくて」

外す。
切るより、
少しだけ柔らかい。

「仕事が遅い?」

「いや、早い。早すぎる」

謀次郎は、
何も言わずに聞いている。

「早い分、
周りがついていけない。
空気を読まない」

空気。
またしても、
形のないものが理由になる。

「皆が困るんです」

皆。
その言葉が出た時点で、
個人の話ではなくなる。

「一人を守るために、
十人を不快にするわけには
いかないでしょう」

理屈は、
いつも整っている。

幸吉が、
軽く相槌を打つ。

「それはまあ、
仕方ないですね」

仕方ない、という言葉は、
責任を置き去りに
するために使われる。

その日の夕刻、
件の下職が現れた。

染料の匂いが、
まだ体に残っている。

「俺、何か、
悪いことしましたか」

最初の問いが、それだ。

謀次郎は、
すぐには答えなかった。

答えがある問いではない。

「仕事が、早すぎると言われました」

下職は、
苦笑した。

「遅いって、
怒られるよりは、
ましかと思ってました」

それは、
誰に教えられた価値観だろう。

「周りが困る、と」

「俺が遅くすれば、
今度は別の奴が怒られる」

どこを切っても、
誰かが傷つく。

だから、
最初から切る

それが、
城下で最も効率の良い方法だ。

「伊予屋さん」

下職は、
少し声を落とした。

「俺、悪くないですよね」

この問いに、
口入屋は慣れていない。

悪くない、と言えば、
希望を与える。

だが、希望は長持ちしない。

悪い、と言えば、
納得はするかもしれない。

だが、それは嘘になる。

謀次郎は、
こう言った。

「悪いかどうかは、
今の話じゃない」

下職は、
よく分からない顔をした。

分からないまま、
人は切られていく。

翌日、
別の商家からも、
似た話が来た。

「うちは、
波風を立てたくないんです」

波風。
水が動くことを、
悪とする考え方。

城下町は、
常に波打っている。

だが、人は
止まっているように
見える水面
を好む。

佐一が、
帳面を見ながら言った。

「切られた理由、
全部、違うようで、
同じですね」

「何が同じだ」

謀次郎が問う。

「誰も、
自分が切ったとは言ってません」

切ったのは、
空気。
皆。
決まり。
仕方のなさ。

人間は、
自分で刃物を握るのを嫌う。

誰かに持たせる。
名前のない何かに。

「外道って、
誰なんでしょうね」

幸吉が、
冗談めかして言う。

「切る側?
切られる側?」

その問いには、
答えがある。

外道とは、
切る理由を
自分以外のものに預けた者だ。

その夜、
謀次郎は帳面を開いた。

切られた者の名が、
並んでいる。

誰も、
悪事は働いていない。

だが、全員、
「使いづらい」。

その言葉が、
一人の人生を十分に終わらせる。

謀次郎は、
帳面を閉じた。

切る理由は、
伝染する。

一人が始めると、
皆が安心する。

そして気づいたときには、
誰も切っていないつもりでも、
町は血の海と化す。

暖簾の外で、
人の気配がした。

今日もまた、
切られた誰かが来る。

外道は、
もう特別な存在ではない。

それは、
町の呼吸そのもの
なりつつあった。

第三節 刃物を持たされた者


切られた者は、
二種類に分かれる。

黙って去る者と、
理由を欲しがる者だ。

前者は町を出る。
後者は、町に残る。

伊予屋に来るのは、
たいてい後者だった。

その男も、後者だった。

名を、清吉と言った。
油屋を外された
若い奉公人である。

真面目すぎると言われ、
空気を読めと言われ、
皆のためだと言われた。

それらはすべて、
「お前が悪いわけではない」
という形をしていた。

だから、
清吉は納得できなかった。

「伊予屋さん」

清吉は、
まっすぐ謀次郎を見て言った。

「私は間違ってましたか」

この問いは、
切られた者が必ず辿り着く場所だ。

謀次郎は、
すぐに答えなかった。

答えれば、
その言葉は一生、
清吉の背中に刺さる。

「間違い、というより」

謀次郎は、慎重に言葉を選んだ。

「余った」

清吉は、目を瞬いた。

「余る……ですか」

「町には、
ちょうどよい人間しか、
居場所がない」

清吉は、しばらく黙っていた。

その沈黙は、
理解ではなく、
整理だった。

「私、ちょうどよくなれますか」

なれる、と言えば嘘になる。
なれない、と言えば残酷になる。

謀次郎は、
答えなかった。

清吉は、
それを拒絶だとは受け取らなかった。

拒絶されるより、
可能性を保留されるほうが、
人は長く考える。

数日後、
幸吉が耳打ちしてきた。

「旦那。清吉の奴、
裏で動いてます」

「何を」

「改めの連中と、
話してるらしい」

改め。
正義の顔をした連中。

「切られた腹いせ、ですかね」

幸吉は軽く言ったが、
腹いせで済む話ではない。

切られた者が、
切る側に回るとき、
最も厄介なのは、
彼らが“仕組み”を理解していることだ。

清吉は、
改めの帳面を手伝い始めていた。

理由は簡単だ。

「よく町を知っているから」

切られた者ほど、
町をよく見る。

誰が遅れ、
誰が余り、
誰が目立つか。

清吉は、
それをすべて知っていた。

「私のような者を、
これ以上出さないためです」

そう言って、
彼は帳面に印を付けた。

丸でも、
×でもない。

二重丸だった。

「この人は、
問題ありません」

問題がない、という印は、
誰かが問題になることを意味する。

清吉は、
一人ずつ、
印を付けていった。

自分と似た者を、
避けながら。

真面目すぎる者。
口を出す者。
空気を読まない者。

かつての自分に近い者ほど、
慎重に、
だが確実に、
外していった。

それが、
自分が生き残る方法だと、
彼は理解していた。

伊予屋に、
噂が届いた。

「改めが、
やけに精密になった」

「外れる人間が、
前より納得してる」

納得している。
それが、最も恐ろしい。

人は、
自分と同じ立場の人間に切られると、
不思議と理由を受け入れる。

「分かる気がする」
「俺も、ああだったかもしれない」

理解は、
刃を鈍らせない。

むしろ、
よく切れる。

ある夕方、
清吉が伊予屋に来た。

顔色は良く、
身なりも整っている。

「伊予屋さん」

声に、
迷いがなかった。

「役に立ってます」

その言葉に、
誇りが混じっていた。

「誰かを、救ってます」

謀次郎は、
清吉の手を見た。

かつて、
油で白かった指先は、
今は帳面で黒ずんでいる。

刃物を持つ手の色だった。

「救う、とは」

謀次郎が聞くと、
清吉は、
少しだけ言葉に詰まった。

「……切らなくていい人を、
切らないようにしてます」

では、
切られているのは誰か。

その問いを、
清吉は口にしなかった。

しなかったから、
続けられる。

謀次郎は、
静かに言った。

「お前は、外道じゃない」

清吉の顔が、ほっと緩んだ。

「ただな」

続ける。

非道は、
自分が正しいと思った瞬間に始まる

清吉は、
その意味を理解しなかった。

理解しないまま、
頭を下げた。

帰り際、
清吉は振り返って言った。

「伊予屋さん。
次は、もっと公平にやります」

公平。
その言葉ほど、
人を多く切ってきた言葉はない。

謀次郎は、
何も言わなかった。

刃物を持たされた者は、
必ず一度、
その切れ味を確かめる。

それが、
外道から非道へ渡る、
最も短い橋だ。

第四節 正義は正義を喰う


事件は、
大きな音を立てて起きなかった。

城下町で起きる
本当に厄介な出来事は、
たいてい「もっともらしい顔」をして、
静かに始まる。

最初に噂が届いたのは、
伊予屋ではなく、
茶屋だった。

「改めで外された者が、
夜道で揉め事を起こしたらしい」

揉め事、という言い方は、
都合の悪い詳細を包むための袋だ。

次に届いた噂では、
それは喧嘩になり、
さらに次では、
刃物が出たことになっていた。

死人は出ていない。
だが、それは
「たまたま」だった。

町年寄は集まり、
役人は帳面を開いた。

結論は、早かった。

「改めが、
まだ甘いのではないか」

甘い。
正義が失敗したとき、
必ず出てくる言葉だ。

「公平にやっているはずだ」

誰かが言う。

「では、なぜ不満が残る」

誰かが返す。

議論は、
答えを探していない。

強化の理由を探している。

清吉は、
改め帳の前に座っていた。

顔には疲れがあったが、
迷いはなかった。

「私が、足りなかったんです」

自分を責める者は、
一番使いやすい。

「もっと早く、もっと正確に、
切っていれば」

切る、という言葉を、
彼はもう隠さなかった。

役人は頷いた。

「君は、よくやっている」

褒め言葉は、刃を研ぐ。

「では、基準を見直そう」

基準。
それは、正義の骨格だ。

「問題が起きる前に、
芽を摘む」

誰も反対しなかった。

反対すれば、
芽と見なされる。

清吉は、
新しい基準を書き始めた。

――異議を唱えたことがある
――場の空気を乱した前歴
――上の判断に疑問を呈した回数

それらはすべて、
かつての自分の履歴だった。

だが、
今の彼には、
それがよく見えた。

「これで、
もっと安全になります」

安全。
また一つ、
人を切るのに便利な言葉が増えた。

城下では、
改めの結果が
一斉に出た。

×が増えた。
三角は消えた。

曖昧は、
正義の敵だからだ。

切られた者たちは、
文句を言わなかった。

文句を言えば、
「やはり問題がある」と
証明してしまう。

納得したふりが、
町に満ちた。

伊予屋にも、
通達が来た。

――今後、
――改め対象者への
――口入れ、紹介、助言を禁ず

助言。
それすら、
危険になった。

謀次郎は、
紙を読んで、
静かに畳んだ。

幸吉が言った。

「旦那、
もう動けませんね」

佐一も続ける。

「帳面に逆らえば、
伊予屋も切られます」

海は、
何も言わなかった。

言葉が、
刃になる場所では、
沈黙だけが残る。

その夜、
例の油屋で、
事故が起きた。

灯油の管理が、
いい加減になっていた。

真面目すぎる若い衆がいなくなり、
誰も量を確かめなかった。

小さな火事だった。
だが、
町はざわついた。

「切りすぎたのでは」

その声は、
すぐに消えた。

誰も、自分の判断が
火をつけたとは思いたくない。

清吉は、
報告を聞いて、
唇を噛んだ。

だが、
帳面を閉じなかった。

閉じれば、
今までのすべてが
無意味になる。

人は、
自分の正義を守るためなら、
さらに非道になれる。

そのとき、
役人が言った。

「伊予屋を、
正式に調べよう」

理由は、
明白だった。

――改めに従わない
――助言を続けている
――外された者が集まる

清吉は、その提案に
一瞬だけ、目を伏せた。

だが、頷いた。

「公平に、やりましょう」

公平。それは、
誰も逃げられない
最後の網だ。

謀次郎の名が、
帳面に書かれた。

その横に、
空白があった。

まだ印はない。

だが、
空白ほど、
不安なものはない。

正義は、
正義を喰い始めた。

次に喰われるのが
誰かは、
もう決まっている。

それだけが、
誰の目にも
はっきりしていた。

第五節 外道でも、非道でもない場所


改めは、朝に行われた。

朝は人の心が一番、
昨日を引きずっていない時間帯だ。
だから、正しいことがしやすい。

伊予屋の前に、
役人と町年寄が並んだ。

並ぶ、という行為は、
それだけで結論を含んでいる。

「伊予屋・謀次郎」

名を呼ばれたとき、
謀次郎は一歩、前に出た。

前に出る癖は、
口入屋にはない。
だが、今日は必要だった。

「改めの結果を伝える」

役人が帳面を開く。

清吉は、
その横に立っていた。

顔色は悪くない。
むしろ、
少しだけ、晴れている。

「伊予屋は、改めに従わず、
切るべき者を切らず、
助言を続けた」

一つ一つ、事実だった。

「よって――」

帳面に、印が押される。

×

それは、
誰かを守るための印ではない。

これ以上、考えなくてよい
という印だ。

幸吉が、
歯を食いしばった。

佐一は、
視線を落とした。

海は、
何も見ていなかった。

謀次郎は、印を見て、
何も言わなかった。

言えば、
「言い訳の憑き物」が
生まれる。

「異議は」

清吉が、
形式通りに聞いた。

形式通り、というのが、
一番残酷だ。

「ない」

謀次郎は答えた。

それで、改めは終わった。

人だかりは、すぐに散った。

正義は、長居すると疲れる。

伊予屋は、その日から
正式に口入れを禁じられた。

暖簾は、下ろされなかった。

下ろすと、
「反省」に見えるからだ。

数日後、清吉が一人で来た。

役人の顔ではなかった。
だが、
元の奉公人の顔でもなかった。

「伊予屋さん」

声は、以前より落ち着いている。

「私、間違ってませんよね」

謀次郎は、
初めてはっきりと答えた。

「間違ってはいない」

清吉の顔が、
緩んだ。

「ただ」

続ける。

「お前は、正しかった理由を
忘れるな」

清吉は、首を傾げた。

「正しいから、やったんです」

謀次郎は、
静かに言った。

「違う」

「お前は、切られたから、切った

その言葉に、
清吉の顔が固まった。

「それを忘れた瞬間、お前は、
外道でも、非道でもなくなる」

清吉は、
理解できなかった。

理解できないから、
役目を果たせる。

彼は頭を下げ、
去っていった。

その背中は、
もう迷っていなかった。

数年後、
城下の改めは
自然に消えた。

帳面が増えすぎ、
誰も管理できなくなったからだ。

代わりに残ったのは、
もっと単純なものだった。

空気

誰が余り、
誰が目立ち、
誰が切られるか。

誰も言葉にしないが、
皆が知っている。

伊予屋は、
口入屋ではなくなった。

だが、
人は来た。

切られた者。
切りたくない者。
切る側に回って、
眠れなくなった者。

謀次郎は、
仕事を紹介しなかった。

ただ、
距離の取り方を教えた。

切られない距離。
切らせない距離。
そして、
自分を切らない距離。

ある夜、
幸吉が言った。

「旦那。俺たち、
何者なんですかね」

謀次郎は、
暖簾を撫でて答えた。

「外道でも、非道でもない
差し詰め無道か」

「じゃあ、正しいんですか」

「正しい場所は、一番、人を切る」

その夜、城下では、
また誰かが切られていた。

だが、その理由を
口にする者はいなかった。

理由が要らなくなったとき、
外道は完成する。

伊予屋は、
その少し手前に、
今日も暖簾を掛けていた。

切られないためにではない。

切ることを、
当たり前にしないために。

ABOUT ME
factory-workers
31歳 工場労働者 孤独と自由を設計し、 歴史と小説を通して 世界の“構造”を語る人。 半隠遁ライフ / 日本史講義 J-POP考察 / 小説はKindleで販売中。