小豆島調査の要請
晴耕雨読の生活は至高だ。勤倹と学問。自らの人生を描いていく。残された時間をいかに使っていくか。しかし、その生活に1つの嵐が襲う。次の書状が私のもとに届く。
瀬戸内海に浮かぶ香川県の小豆島にて、不穏な動きあり。今後、進出を考える我らにしてみれば、後顧の憂いは取り除いておきたい。そのためにも、貴殿には、この島の風俗を実地に調査してもらいたい。軍資金は自腹、3日もあれば事足りるはず。詳細なレポートを期待する。
本部長 ヨーゼフ・K
おお!
私は行くだろう!
歯車、奴隷の如く!
さあ、義務の時間!
汝を酔わしめよ!
役所魂の極みのような要請だ。しかし、会社員は社会の歯車。大いに勤めるべし。諸君、これが社会の実情だ。奴隷のごとく、刻苦勉励しようじゃないか。今回の遠征は香川県の小豆島。以下に地図を示そう。
赤丸が小豆島になる。今回は、海上戦のため、海軍編成も行わなくてはならない。徳島を北上し、香川に入国。高松港から軍艦で小豆島へ。小豆島は装甲車で島内調査と行こう。
出立の時:猪突猛進
小豆島観光協会【公式】 (shodoshima.or.jp)
遠征前夜にWikipediaで情報を収集。他にも多くの諜報局から情報をもらう。侮りがたし小豆島。起床は朝の5時。勤勉奴隷の朝は早い。諸君、三文の得をしようじゃないか。万事を準備し、出撃する。まずは徳島を北上し、高松港を目指す。1時間と少しだろう。
例のごとく、出発前日には労働の鞭で満身創痍。それでも人は進んでいくのだ。大いなる目的のために、そうだろう?諸君。徳島北上を開始、高速道路を経由し、高松を狙う。すでに気温が高い。体の水分が奪われていく。水だ、水を。
小一時間ほどで高松港に到着。何のことはない、簡単な行程であった。私にとっては朝飯前の進軍だ。この程度の行軍で、疲弊しているようでは、小豆島一周など到底できない。気を引き締め続ける。手綱を緩めることはない。
どうも私は天気に味方されるようだ。旅行のほとんどが快晴。雨に悩まされることはまずない。日頃の行い?神の導き。それにしても港町の香り、私の好みだ。私はそれを抱きしめるだろう。ムルソー的愛情をもって。
本部長から手配された軍艦。車ごと乗りこみ、島へ送還してくれる。現代の文明ここに極まれり、といったところだろうか。多くの人々が小豆島に向かうようだ。そこまでの魅力を持った、謎多き島。今回の調査で何を発見するのか。どのような危険が待ち受けているのか。非常に楽しみではないか。これこそ探検家の醍醐味だ。
一瞬の高松港。私はまた戻るだろう。それまでしばし別れの時。汝嘆くことなかれ。街を離れていくこの景色。まさに旅情、旅情じゃないか。住み慣れた土地でもないが、どこか一抹の寂しさを感じる。この感情はどうして起こる?自問自答の船旅。とにもかくにも思考し続けてみる。しこり続けることだ。
遠ざかる
街を眺めて
海を行く
航行は順調。快晴の空のように暗雲は立ち込めない。このまま何事もなく小豆島に到着すればいいが。海上の人はあまりにも無防備だ。悲しい話だ。自然はあまりにも強大。人間をいとも簡単に吞み込んでしまう。科学が発展した今日、人間の偉大さもある。しかし、自然を飼い慣らすことはできない。
船上での一筆
森に潜む若き鷹は 黙々とその爪を研ぎ続ける。 鉄槌の道具として恐れられるその刃を 汝はなぜ研ぎ続けるのか。 一度大空に秋風が舞えば 汝はその翼を広げ、 天空へと飛び立つ。 殺戮の劇場へと赴き 無慈悲にもその爪を突き立てる。 血に染まりし翼の清めに 泉へと急ぐ君を 森の獣どもは恐れ慄き 急いてその身を隠さんとする。 孤独、孤高の存在よ! 朽ちていく勇敢な肉体よ! 安息なき嘆きの生命! ただ死の杯を満たし続ける。
1時間ほどだったろうか、船は瀬戸内海を北上し、いつの間にか島を視界に捉える。小豆島の湾内に突入し、上陸の準備を進める。湾内戦の開始。ついに開戦の狼煙が上がる。賽は投げられたということか。カエサルも同じ心境だったのだろうか。
小豆島、最初の地。土庄(とのしょう)港に着地。ここから実地調査が始まる。炎天下のデスマーチといった所だろうか。先が思いやられる。ここまでの道のりは平安だった。しかし、不吉の前触れでなければいいのだが。一応、本部長に到着の電報を打つ。まずは現状の把握だ、諸君。
これが小豆島の全体図。
そして、赤丸が現在地だ。ここから島を東回りに進む。おそらく半日もかからないだろうというのが、私の目算だ。
天使道:エンジェルロードへ
観光コンテンツ | 小豆島観光協会【公式】 (shodoshima.or.jp)
エンジェルロード/土庄町 (town.tonosho.kagawa.jp)
最初の攻略地は「エンジェルロード」
諸君、このような優しい名前に騙されてはいけない。何人もの偉人が苦杯を舐めてきたのだ。優しさの中に落とし穴あり、だ。心を引き締めて取り掛かろうじゃないか。よいかな?
エンジェルロードは土庄港から車で10分程度。道案内の標識が各所に備え付けられている。つまり、それほどの有名人ということだ。大いなる力を持つ者。それがエンジェルロード。
天使など何のその!
悪魔のように踊り、
天使道を蹂躙する!
諸君!進みたまえ!
エンジェルロード付近へ。さすがに瀬戸内海の国。監視の船も抜かりがない。隠密に、隠密を重ねるのだ。一度でも目立つ行為をすると、瞬く間に捕らえられる。腕の見せ所ということか。伊賀甲賀の血を活かす時が来た。御庭番の面目を躍如する。
高台に登り、エンジェルロードを見下ろす。何ということだ、圧倒的じゃないかエンジェルロードは…。すぐさま接近を開始する、諸君、寄せる波に気を付けたまえ。自然は偉大。それを忘れてはいけない。奴らはすぐに牙を向けてくるだろう。
エンジェルロードを踏みしめる。天にも昇るような気持ちになってくる。私が天国に行けるかどうかは別にして、だ。私の鼓動が高まる。この天使道を私が行くのだ。諸君!
見渡す限りの美景。青い海と青い空。心地よい微風と太陽の光。万事が、万事が美しい。これ以上のシラー風があってよいのだろうか。おお、小豆島よ。私を魅惑しようというのかね?しかし、私にも任務があるのでね、そう簡単に考えてもらっては困るのだよ。
!?!?!?!?!?
去りなさい、悪魔の人
貴方の居場所はない
地下へ帰りなさい
おお!
残酷なる現実!
天使の裁き!
真理の鉄槌よ!
何という悲劇。アイスキュロスも腰を抜かす悲劇だろう。地下で見ているかな、シェイクスピアよ!諸君、これ以上は進めない。撤退の鐘を!全くなんということだ、ここまで巧妙に罠が張り巡らされているとは思いもしなかった。
「変人」ではなく、「恋人」であったか。恋人の聖地、それがエンジェルロード。では、変人の聖地:デビルロードを作ろうじゃないか、諸君。なるほど、変人は追放が約束された展望台なのだな。ふむ、なるほど、大いに結構だ。十字架を大いに背負ってやりますよ。イエスよ!その十字架を我に背負わせたまえ!
こうなってしまっては一刻の猶予もない。諸君、次の攻略地点に向かおう。
オリーブの都:オリーブ公園
道の駅 小豆島オリーブ公園 公式サイト (olive-pk.jp)
観光コンテンツ | 小豆島観光協会【公式】 (shodoshima.or.jp)
島を東進し、「オリーブ公園」へと向かう。
天使道からは、車で30分ほどの距離だ。装甲車で、島の街道を行く。休日ということもあり、交通量も多い。しかし、左手には雄大な山脈、右手には青々とした瀬戸内海。一敗地にまみえることにはなったが、自然が私の傷を癒す。自然こそ私の親友だ。
小豆島といえばオリーブ。しかし、むしゃむしゃ食べるものでもない。普段は摂取しない。調味料として大いに役立っている。パスタには重宝する。某もこみちだ。
地中海と気候が似ているため、盛んに栽培されているそう。ここではオリーブの輸入、栽培の歴史が学べるため、お勧めしたい。どのようにしてオリーブが伝導されてきたのか。そして、栽培家の苦悩と努力、苦心。ここにも人類の、オリーブの歴史が存在していた。
栽培者の苦労が詳しく語られている。手作業から、機械の導入、現在も人の手で丁寧に栽培されているそうだ。特にオリーブを割る作業は当時、手作業で行われた。人力ではかなりの力が必要なようだ。現在、当然のようにオリーブを調達できるのは、先人の苦労あってのものだと実感できた。
公園には多くのオリーブの木。ここに来るときも、多くの民家で栽培されているのを見かけた。そして、見たまえ!諸君!この景色を!圧倒的、まさに圧倒的だ!自然が私を畏怖させる。偉大なる大地!神聖なる自然よ!
丘から見下ろす港町の美しさ。心やすらぐ、小島の町。天使道での傷をこの町が癒すだろう。心地よい夏風が吹き抜けていく。いいじゃないか、いいじゃないか。ここで飯をガツガツなんてやろう日には、もう昇天ものだろう。目に焼き付けよう、諸君。
巨大なモニュメント。宇宙からの信号を傍受。いまだ知られぬ宇宙の構造を分析し、人類にその道を開く。末恐ろしき人類の好奇心。宇宙戦争の際には、ここが反撃の拠点となるだろう。広大な宇宙への道を、この小さな町から展開する。なんともロマンのある話じゃないか。ロマン主義さ。
公園の中には巨大な白風車。緑と白の色合いが美しい。まさに夏の風景画だ。緊急時には波動砲に代わるという都市伝説。ジブリ映画:魔女の宅急便のほうきをもって記念撮影ができる。そこらじゅうで観光客が飛びまわっている。私?私はポエム作成で忙しいのだよ。この情景をポエムに収めておきたいのさ。
まだまだ、島の半分も来ていない。実地調査は始まったばかり。本部長へのレポートをまとめつつ、シャーベットをつまむ。小豆島が私を楽しませるだろう。