ベトナム渡海記

【ベトナム世界遺産】チャンアンの秘境を踏む

仕事の関係でベトナムに渡海した際、数日の休暇を手に入れることができた。この機会を逃すわけにはいかない。ここぞとばかりにベトナムをむしゃぶり尽くす。限られた期間でさえも、死への行進になる。魑魅魍魎の迎えが来る前に、少しでも多くの経験を。

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ハノイのホテルから世界遺産のチャンアンへと向かう。車で高速道路を用いて進軍する。ベトナム人のハイさんによると、3時間ほどの長旅のようだ。ハノイの中心部、郊外を抜けると、美しい田園が広がっていた。おお、地方の美を極めた者よ!今回はハイさんとズイさんに案内をしていただくことになる。お二人とも私より少し年上だが、まだまだ若い。

ベトナムの高速道路は、日本の資金援助があるそうだ。日越の関係は良好で、ベトナムにも親日の方は多いのだとか。しかし、この高速道路には各所にトラップが仕掛けられている。車を弾ませる「ベトナム段差」と「ベトナム小穴」。どちらも車内に大きな衝撃を生み出し、私の首を攻撃する。なかなかの痛打である。

小一時間ほどで、サービスエリアに立ち寄る。ここでトイレ休憩とコーヒーを一杯キメた。ベトナムコーヒーのミルクは練乳を使っているそうで、異常に甘い。しかし、稀代の甘党家の私には大歓迎だ。グイと飲んでいく。まことに美味、美味である。

ハイさんの目論見通り、3時間ほどで目的地に到着。どこか中国を思わせるような建築様式。確かにベトナムの歴史を調べると、国境を接しているだけに、深いかかわりがある。そこには喜怒哀楽、千変万化の出来事がある。政治、経済、文化。長い時間の中で、両者は歩みを続けてきた。

チャンアンを観光する前に、食堂で腹ごしらえをする。チャンアン観光は山間をボートで進んでいく。まさに肉体労働。プロレタリアなのだ。私にうってつけの仕事。ここまで腕っぷしで生き抜いてきた私にはね。しかし、ベトナム飯は絶品だ。ガツガツと食ってやった。

提灯、ぼんぼりのようなものが飾られている。出陣前に士気を高めるということなのだろうか。確かに力がみなぎってくるような気さえする。この雅な気持ちが大和民族に共鳴しているのだろう。猛がいい、我が魂。この身はたといチャンアンに散ろうとも、留めおかまし大和魂。

ベトナムの山は珍しい形をしている。私の住む地域では、見ない形だが、国内の他地域ではどうなのだろうか。ベトナム本土の地理学的要因の結果なのだろうが、あいにく、地理の知識は皆無だ。ただ、珍しい形だなぁ、という味気のない感想しか出てこない。

天気も良く、非常に気持ちが高揚する。しかし、気温は高く、すでに30℃を超えている感覚がする。湿気も多く、日本の夏に似ているようだ。ベトナムは天気も変わりやすく、突然スコールに襲われることもある。そのあとは、カラッと晴れ、気温も少し下がる。千変万化の大越国である。

世界遺産ということもあり、観光客で賑わっている。主に西洋人が多く、コロナにもかかわらず、たくさんの人々が訪れているようだ。私もそのうちの一人になるのだが。

遂に、水上の旅が始まった。早速、漕ぎ手のスタッフさんと共に、肉体労働に勤しむ。


さあ、進め!
ベトナムを、
チャンアンを
駆け抜けるのだ!

しばらく行くと、厳島神社のような建物が出現した。これは、舞踏会を行うためのものだが、ここ数日の大雨で水没しているそうだ。水上で舞踏する。なんとも粋なものではないか!粋、この粋こそが私を高ぶらせるのだ。ここで剣舞を行う戦士を想像してほしい。うむ、いいじゃないか、いいじゃないか。

本来なら、この洞窟の中を進み、冒険が加速していくのだが、長雨のために、中止となってしまった。しかし、また、ベトナムに来る口実を作ることができる。次回に期待したいところだ。

2時間と少しの船旅を満喫した。自然の中に溶け込み、一体となる快感。人工物のない、解放された空間に身を置くことは、1つの自然治療になるだろう。チャンアンはまだまだ力を隠している。それこそ、ホモサピエンスには太刀打ちできないほどの強大な力を。この旅で感じた心境を試作し、文章に残すことは非常に愉快なことだ。私に大いなる力を授けてくださったチャンアンに満願の感謝を捧げよう!我らが世界を懲罰する!

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