岡山旅行

【倉敷美観地区】 吉備の国(岡山県)を知る旅路

さらば、小豆島!堂々退場す!

緊急実地調査案件

岡山県で、きな臭い噂を入手。至急、小豆島から岡山県にわたり、かの地の実情を報告されたし。これは全ての業務よりも優先される案件である。滞在費は自腹調査期間は3日間。早急、詳細なレポートを求む。

本部長 ヨーゼフ・K

すべてはここから始まった。小豆島での実地調査を終え、帰路に就こうとした矢先、本部長からの緊急要請。天が私に求めているのだ。「社会の歯車として、汝の義務を果たせ」と。

諸君、歯車としてできることは何か分かるかね?そう、欠けることなく、回り続けることさ。いいじゃないか、社会というこの舞台で、私は踊り狂ってやるさ、大いに!

甲板で小豆島の思い出をつらつらと書き留めておく。そして、お気に入りの音楽とともに、悦に入る。小刻みに震える私。ずんずんと音楽が脳を揺らす。つまるところは「オーリバル」ということになる。海と音楽と狂人。この三重奏を止められるかい?近づかないことが賢明なのだ。


海が私を煽る!
狂気の渦の中へ!
嘲笑うように、
太陽も輝いている!

海路を進むが良い!

小豆島から一路、岡山県を目指す。もちろん、用いるのは海路、小豆島軍艦だ。小一時間ほどの行程だそうだ。岡山県は小さいころに訪れたことがある。「鷲羽山ハイランド」という遊園地に。山岳地帯にあるブラジリアン遊園地。きびだんごを食った思い出。

海路をずんずん進む。

岡山県は天気がいいイメージがある。晴天の岡山。そして、きびだんご鷲羽山ハイランド。そして、交通の要所。戦国武将の宇喜多直家岡山城刀剣文化。ぱっと出てきた、諸々を思い浮かべる。しかし、今回では、まわり切れないだろう。ぎゅうぎゅうに絞り込んでやる。

新岡山港に上陸。進撃開始!

小豆島から車ごと運んでもらえるので、上陸次第、行動を開始できる。とにもかくにも行動あるのみだ!岡山県をじっくりと知り尽くしてやる!この探求心が私を高ぶらせる!


岡山を征服する!
各員奮励努力せよ!
吉備国は近い!

岡山の美観、倉敷を見る

新岡山港に上陸を果たし、さっそく岡山を蹂躙する。港の写真は撮り忘れてしまった。不覚だが、これからの作戦に集中しよう。まだまだ名誉挽回の機会は転がっている。拾い上げて見せるさ!大いにね!

上陸後の最初の目的地は「倉敷美観地区」

古くから商業の中心として開発されてきた倉敷の街並みが保存されている。江戸の蔵屋敷を皮切りに、水運業の足跡、商人の住居、など歴史好きにはたまらない散策地だ。

新岡山港からは、一時間もかからずに到着。すでに夕刻に近づいているため、長くは滞在できないだろう。しかし、ねっとりと楽しませてもらおうじゃないか、ええ?

美観地区に到着。彷徨う。

無事に美観地区に到着する。さっそく、周辺をうろうろし始める。日も傾き、いい感じに街並みも赤みがかってくる。夕刻は私の専売特許。すでに勝機がこちらに傾きつつあるな。夕日は気持ちを閑寂にさせる。1日の終わりと人生の終幕が重なるからだろうか。禅の精神が私を囲い込む。

この古風感がたまらんのだよ。

大都会の圧倒的で、威圧的なビル街も私は好きだが、この美観地区のように屋根の低い居住地も好きなのだよ。古き良き日本を保存しようという試み、いいじゃないか。そして、近代化を推し進める現代の日本と共存していくことが肝要ではないかね?

夕刻も近づき、人影も失せる。

白塗りの壁瓦屋根。ぎゅうぎゅうに押し込められたこの閉塞感がぐっと私の胸にくる。息の詰まるようなご近所との関係を思うと、憂鬱倦怠が私を包み込む。しかし、その連帯感が組織の秩序安定に貢献しているのだろう。

街の交差点。商店も連なる。

すでに営業時間を過ぎてしまったのか、ほとんど店じまいをしてしまっている。茶店などもあったが、残念ながら間に合わなかった。散策後の茶店での一杯が最高なのにもかかわらず。本部長の急な申請のためだ。呪われてあれ!

水運の足跡。街の景観もアップする。

水の良し悪しは、町の繁栄に影響すると聞いたことがあるが、これは確かかもしれない。水あるところに生命は生まれる。水の街、倉敷よ。しかし、美観地区といっても、徒歩だと、かなりの時間が必要だ。変態的な散策をするには、時間があまりにも足りない!

散策の醍醐味。建物の観察も十分な楽しみだ。行きかう人々、そして喧騒。広がる空と澄んだ空気。私の体に沁み込んでくる。この充実感は何だ。異国での散策がこれほどまでに、私を高ぶらせるのか。見たこともない景色、その土地の特産品。全てが、全てが心を満たす。

旧家の開放。教育の一翼を担う。
豪商の邸宅。財力の偉大さよ!

豪商の邸宅が無料で開放されていた。維持にも費用が掛かるというのに、なんともありがたい恵みだ。私のような貧乏探検家には地獄に仏。善良なる倉敷市民よ!そして、古き良き倉敷を知る最上の方法だとは思わないかね、諸君?

隣接する商店街にたどり着く。

美観地区に連なる商店街に足を踏み入れる。彷徨い歩く酔漢のごとく練り歩く。シャッター街を見ていると、徳島のそれを思い出す。この大型ショッピングモールに駆逐された小隊を救う手立てはないものか。脳みそを働かせねばなるまい。

倉敷ステイションへ進軍。

美観地区を離れ、せっかくだからと、倉敷ステイションにも立ち寄ってみる。先ほどの景観とはうって変わり、近代的な建築様式が顔を見せてくる。

西洋風味の様式も忘れない倉敷の街。

近代建築に、西洋風も織り交ぜてくるのが倉敷の強みだろうか。尖塔が現れ、突然、西洋にいざなわれる。しかし、尖塔は西洋発祥なのだろうか。イスラムにも尖塔様式があったはず。街並み一つでここまで考えさせる倉敷という町、恐ろしい子。

散策もたっぷりと楽しんだおかげなのか、空腹に襲われる。このあたりで飯を食うのも悪くないだろうということで夕食に。近くの洋食店に転がり込み「ラザニア」を注文する。クチャクチャと飯を平らげご満悦。

今夜の宿は、予約もできていないため、「快活クラブ」という巣窟で宿泊することに決めた。安価な宿で、娯楽が詰め込まれた堕落館ともいえるかもしれない。このクラブハウスは私もお気に入りだ。古今東西の書物を集め、食料品の備蓄も欠かさない。

この高級会員制クラブハウスの前に、倉敷のスーパー銭湯で、旅の垢をすっかり落としてしまう。旅では、よく地域のスーパー銭湯に通うことが、私のひそかな楽しみでもある。地域の実情を体験できる貴重な時間だ。

クラブハウスで岡山レポートをまとめつつ、初日の冒険を締めることにした。翌日も名所旧跡仏閣神社が目白押しの予定となっている。少しでも体力を回復しておかなければならない。それでは、諸君、今夜は旅の疲れをしっかりととっておこう。

夕刻の倉敷と別れる。

~1話 完~