高知に突撃してから、それなりの時間が経過した。日が傾いてきた。夕闇が近づく。ここからは、暗闘の時間というわけか。暗闇の高知、はたして、どうなるか。しかし、諸君。弱腰になってはいけない。どんな時も、冷静沈着に、豪胆でなければ。いよいよ高知の本丸へと突入する。「高知市」への進撃である。
紀貫之に別れを告げ、次なる攻略へ。
悠久の地:桂浜を歩く
「桂浜」
高知の代表的な浜辺である。海に近いため、海上戦の準備も怠ってはいけない。紀貫之邸跡から約30分。傾いた夕日に晒されながら、駆ける。日中の海とはまた違う姿。時間や季節によって、その姿を変える。これも自然の醍醐味。大型連休のせいか、渋滞が続く。あくせくしながら桂浜に到着。
もう夕刻。だが、夕日と桂浜の美しさに感極まる。何度見ても、美しい浜だ。この景色の前では、多くの人が圧倒されるだろう。私は内省の海へと漕ぎ出す。とにもかくにも、内省的になっていく。これまでの人生。これからの歩み。さあ、どうしたものかと。
おお!夕刻の美!
桂浜の誘惑!
孤独の親友よ!
このロケーションを活かし、夕食に取り掛かる。今夜の夕食は少し毛色が違う。ネスカフェと食パンにはちみつが付く。甘党旅行家にはたまらない。飯をガツガツやり、桂浜を眺める。そして、思いついた詩などをつらつらと書きつける。
食後は、浜辺を歩き、運動する。旅先でも体の鍛錬を忘れない。いつ刺客が襲ってくるかもしれないからだ。鍛えに鍛える。夕日は姿を消し、暗黒が桂浜を覆う。わずかな灯を頼りに、浜辺をうろつく。静寂の散歩、観光客の姿は少ない。人の顔の暴虐は消え去った。
夕日と共に、日ごろの憂鬱と倦怠が溶けていくと思った。しかし、闇が増すにつれ、彼らは私に襲い掛かってくる。肩の重みは、時間と共に増大し、今にも崩れ落ちそうな心持だ。立っていなければならない。寄せる波のように、あらゆる苦痛が押し寄せようとも。その二本足で踏ん張ること。クマムシのように生きていく。
今夜は桂浜駐車場が宿となる。夕方以降の料金は無料。車中泊にはもってこいだ。まさに吝嗇王には、おあつらえ向きの宿場だ。ありがたや。波の音と月夜の桂浜。いいじゃないか、いいじゃないか。これぞ風流、風流!ここで一句。
おぼろ月
闇夜の浜に
我ひとり
松と波と月。これほど風流に適した景色もないだろう。過去の文学者たちが、この光景を見ると、感嘆するだろう。小説、詩、歌。様々な形式で表現される。自分の心情をいかに表すか。際限なく書いていくのも良い。俳句や短歌のように、制限の中で、凝縮することも至高だ。諸君も立ち寄った場所で、書き物をしてみると良い。内省的な時間を送ることができるはずだ。
坂本龍馬記念館を目指して
高知県立坂本龍馬記念館|高知県立坂本龍馬記念館 (ryoma-kinenkan.jp)
【公式サイト】
翌日は、バキバキの体と共に起床。これは、車中泊の運命だ。気持ちの良い朝日と共に、本日も高知攻略を行っていく。昨日は、夕刻の桂浜。今日は朝日の桂浜。どの時間帯でも楽しむことができる。心の平安を求めるならば桂浜へ。しかし、私は徳島の者。頻繁に来ることができない。記憶に刻み付けるのだ。
高知の歴史スポットがここに集約されている。見れば見るほど、高知の底力を見せつけられる。どれだけ時間があっても、周り切れそうにもない。特にこの高知市エリアは強敵が多い。少しでも油断すると背中を刺される。油断大敵。生殺与奪の権を握られているということか?
晴天と松の木が映える。悪くない、悪くないぞ。この桂浜もすっかり観光地だ。多くの人々が、この海を訪れる。この季節になると、水遊びをしている人もちらほら。気温もそれなりの高さだ。すぐに夏の桂浜になるだろう。その姿を拝むことはできそうにないが。
まずは、腹を満たす。空腹では戦はできぬ。貧乏旅行家の味方、「マクドナルド」へ。店内でソーセージマフィンとシェイクを注文し、ガツガツとやりながら、本を読む。カミュの「異邦人」をずんずんと読んでいく。孤独と欲望に生きる男の物語。孤独旅行者にはかなり刺さる内容だ。
龍馬の遺品をじっくりと見学。周囲の人々に関する特集が非常に分かりやすい。家族、土佐藩、海援隊、幕臣、薩摩、長州の人々との交流。まだまだ知らないことが多いと自覚。勉学に励むべし。
2時間ほど滞在し、館内を見学。名残は惜しいが、私にも義務がある。諸君、次の攻略地点へと向かおう。
龍馬記念館の傍には、長宗我部氏の居城:浦戸城の旧跡。過ぎ去った歴史のごとく、ひっそりと存在していた。少し、切り立った道を進んでいく。記念館のせいか、ここにはほとんどの人は足を踏み入れない。すでに忘れられた者のように。悲しいがこれも現実である。
坂本龍馬に長曾我部元親。歴史は私を楽しませ続ける。これ以上の娯楽があるだろうか。まだまだ人生捨てたものではない、か。しかし、死は私を追い続ける。いずれは私の肩を叩くだろう。その時まで、生の短さを実感しながら、生きながらえよう。
自由民権運動の聖地を訪れる
「自由民権記念館」へと駆ける。
【自由民権記念館 公式サイト】
坂本龍馬記念館からは、車で15分ほど。明治の自由民権運動で活躍した人々の歴史を追う。
民権運動の始まりから挫折、最盛期、衰退と時系列でまとめられていた。民権家の私物や当時の出版物が展示されていた。個人的には植木枝盛の懐中時計が印象に残っている。強大な権力を持つ明治政府に立ち向かった漢たちの軌跡を心に刻んだ。
館内の様子を写真に収めることができないのは残念だ。しかし、しっかりとこの目に焼き付ける。そして、後日、さらに勉学に励む。知識と思考を繰り返し、自己を磨いていく。
やはり高知の歴史は面白すぎる。2,3日では周りきれない。歴史学習の面白さと奥深さよ。さて、今回はこれくらいにして幕を閉じよう。次回は高知城に君臨した山内氏を撃滅する。諸君、次回が最終戦争だ。